1966年生まれ/プロダクトデザイナー
デジタル技術によるバーチャルなコミュニケーションが増えてきていますが、リアルなコミュニケーションがなくなることは決して無いでしょう。それならば、減少傾向にある「リアルなコミュニケーションの手助けになるようなデジタル技術」という観点から提案できたら、まさに「これからのしるし」になるのではと想像を膨らましました。印影から苗字以外の情報が得られれば、たとえば組織内で同じ苗字の人が複数いても、書類の印影が誰のものなのか混乱することはありません。また、外回りの営業で名刺を置いてくる時のコミュニケーションツールにもなりますし、宅配便の不在連絡票の捺印から配達員の顔などの情報がわかれば、女性も安心して再配達の連絡ができるでしょう。仮に同じ苗字の人が9999万人いても個別情報が管理できる状態を目標に、印影の円を8等分した各エリアに0~9までのシンプルな情報をスマートフォンのカメラで読み取れるよう配慮しました。
1960年生まれ/会社員
デザインコンペはたくさんありますが、その中でもSNDCは賞金の額が大きくインパクトがあったことと、去年、友人がこのコンペでグランプリを受賞したので、それにも触発されて応募しました。「これからのしるし」は、「しるし」「これから」どちらの言葉もいろいろな捉え方ができる広いテーマです。その意味をきちんと理解しているか。新規性、革新性、時代のニーズを捉えているか。実際に商品化が可能かどうか。これらを常に念頭に置いてアイデアを考えました。この「アニマル・ポン」は、ハンコを押した時にその動物の声で鳴くというのが特徴ですが、模型制作の時点でその機能を入れ込むことは難しく、かなり苦労しました。押印という事務的な行為の中に、見た目の可愛さや鳴き声によって楽しさを加えることができたら、押す人も、押してもらう人も楽しい気持ちになるだろう、そうなったらいいなと。そんな思いを込めてつくった作品です。
1983年生まれ/空間デザイナー
「これからのしるし」という未来を考えるテーマは、ポジティブで自由度が高く、楽しめそうだなと思いました。「これから」の後に続く言葉を考えた時に、思い浮かんだのは「生まれる」というフレーズ。生まれる→赤ちゃん→妊娠→検査薬と連想し、アイデアのタネが浮かんできました。ハンコ作品が多いであろうなか、“いろもの”であることはわかっていたので、プロダクトとしての説得力が大切だと考え、キャップにエンボスをつけて外しやすくする、ボディをハートマークが綺麗に見える配色にする、女性的なフォルムにするなど、さまざまな角度から試行錯誤してつくりました。クライアントワークのようにヒアリングができないので、アイデア出しから模型制作の段階まで客観的に見ることに注力しました。その結果、賞をいただくことができ、自信につながりました。これからも見る人の気持ちがポジティブになるようなデザインをつくり続けたいと思います。
1953年生まれ/グラフィックデザイナー
グラフィックデザインが広告などの“伝える”デザインとロゴなどの“創る”デザインに分けられるとすれば、私は“創る”方の、いわば二次元のプロダクトデザインが専門なので、SNDCはフィット感がありました。家紋は日本独自の文化です。西洋にも紋章はありますが、王侯貴族しか持つことはできません。さらに西洋では個人に付くため要素を足してどんどん複雑になるのに対し、日本は家単位なので本家の紋は代々変わらず、分家でもできるだけ要素を増やさずに変化させることでシンプリシティを保ってきた歴史があります。「Kamoline」は、そんな家紋を手軽に使え、国内外にアピールできる実現性の高い実用品を目指しました。すでに世にある家紋の印鑑は、複雑な紋はそのままのデザインで、サイズも大きく、かつ高級品です。これをシヤチハタ印にするため線画でリデザイン。直径12mmのスペースに収まるよう、複雑なものを省略するテクニックに苦心しました。
1993年生まれ/デザイナー
1992年生まれ/デジタルモデラー
1992年生まれ
メカエンジニア プロダクトデザイナー
1990年生まれ
ディレクター・プロジェクトマネージャー
「これからのしるし」を考えるにあたり、「今までのしるし」の在り方を振り返りました。特に印鑑はとても興味深く、その文化を尊重しながら、人と人との間に温かな何かを生むモノをつくれないかと考え、ハンコ面から自分自身が出てきてコミュニケーションが取れるというアイデアを思いつきました。ARの手法を使うと決めた時点で、机上の空論にならないよう、実際に使えるものをつくろうとチームで話し合ったのですが、そもそもARをよく理解していなかったので、そこから大変。みんなで勉強し、ARをつくれる人を探すなど、チャレンジの連続でした。1番大切にしたのは「自分達が本当に欲しいと思えるか」。手に取りたいと思える形になっているか。使い勝手はどうか。何度もメンバーで試作し、使用してみました。多くの方の手に届いて欲しいという思いを込めて、アプリのインターフェイスやAR内のキャラクターの動きなど、細部にまでこだわって制作しました。
1980年生まれ/プロダクトデザイナー
現在、ドイツでデザイナーとして活動しています。日本のデザインコンペは頻繁に確認していますが、特にSNDCの去年受賞作品と今回のテーマ「これからのしるし」は常に頭の片隅にあり、ドイツでの経験を母国で試す機会として応募させていただきました。テーマが抽象的だったので、アイデア出しの段階で縛られることなく、純粋に自分が欲しい「これからのしるし」を発想することができました。ドイツからの送付だったため、2次のモデル制作期間が2週間ほどしかなく、その中でフォルムのみならず、実際にエンボス加工が可能なプロトタイプを仕上げるための、最善かつ最短の作業工程を選択することは容易ではありませんでした。難儀はしましたが、今の自分の中から生まれるベストの作品が提案できたと思っています。エンボスの、しっかり押してしるしを残すという従来の重いイメージを覆すような軽やかさを、この作品を通して感じていただけたら嬉しいです。
1982年生まれ/アートディレクター・デザイナー
たまたまSNDCのコンペサイトを見て興味を持ち応募しました。「これからのしるし」というテーマは、漠然としていますが、さまざまな可能性があり、挑戦しがいがありました。商品化を前提としたコンペなので、どうせなら「これは絶対売れる!」という自信をもって提案したい。しかしその観点からプロダクトデザインを考えると、シヤチハタ印を超えるものはできそうもない。そこで、手軽で便利で使いやすいシヤチハタ印の素晴らしさはそのままに、少し切り口を変え、今までとは違った需要に向けた提案を考えて生まれたのがこのアイデアです。パッと見て日本らしいと感じること、ギフトらしく華やかであることを大事にしてデザインしました。妻に描いてもらったメーセージカードの裏面のイラストも気に入っています。苦労したのはプレゼンシートの作成。コンセプトとターゲット、販売までの仕組みを、いかに簡潔に分かり易く伝えるか試行錯誤しました。
執筆:杉瀬由希 撮影:稲葉真