シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション(SNDC)は、商品化を前提に生活や社会を豊かにするプロダクトや仕組みを募集するコンペです。今回は、『「   」を表すしるし』をテーマに、応募者が自由にその内容を考えて応募していただきました。応募総数は1,206作品にのぼり、思い思いのしるしをどのような形で伝えるか、その技量が試されるコンペとなりました。
応募者の皆様に心より感謝申し上げます。しるしは私たちの身近なところにさまざまなカタチやサービスとして存在します。「   」の中に埋められた多種多様な言葉には、そこから生み出される作品に新しい可能性を感じさせられるものが多くありました。
今年もこの作品の中から新しい日常で使われるプロダクトの誕生を期待します。
姫野 剛
Tsuyoshi Himeno

押印は物事を進める上で重要なコミュニケーションであり、そこには決意や熱意、感情など、押印する人の「心」がある。「My Face Stamp」は、表情の印影で心を表し、伝える電子印鑑。非対面でのコミュニケーションが増えたことにより、難しくなった気持ちの伝達を手助けする。

「SNSスタンプ全盛の昨今の潮流を考えれば、顔の判子という発想は自然な流れであり、なぜ今までなかったのかと思う。自分を最もストレートに表す顔が、印影だけで非常に上手く表現されている」(深澤)
「ネット上で顔のアイコンが増えてきた中で、顔の判子はネットの文化が一回りして現実空間に戻ってきたような、不思議な魅力がある」(中村)
「文字がない判子という点が、シヤチハタの可能性を広げる気がした。イラストではなく写真を使うところもいい。サイズや形を変えれば大小さまざま顔が表現でき、いくつも押して集合体にすることで、判子従来のIに代わりWeの概念を表現できるところに魅力とポテンシャルを感じる」(原)
富岡 啓祐
Keisuke Tomioka

「押す」ではなく、「貼る」しるし。印を押すとき、あるいは自分の名前をしるすとき、それは人との出会いや、物や時との出会いのとき。しるす度に長さを変えていき、視覚と手触りでその経験を体感する。そんな「はる、しるし」の提案。

「付箋の延長の感覚で、現実的なニーズがありそう。何より佇まいがいい。朱い塊で、それを薄皮一枚めくっていくと、どんどん減っていくというモノとしての成り立ちが面白い」(中村)
「シールを貼るという、押すとは違うしるしのつけ方がいい。独特の朱の塊は、剥き出しのリップスティックのような存在感がある」(原)
大沢 拓也
Takuya Ohsawa
須藤 哲
Satoshi Suto

電子印鑑が普及し、クリックひとつで手軽に押印できるようになった反面、印鑑が本来持つ重みや重要性を感じることが難しくなってきている。金属の削り出しで印鑑の形を八角柱型に仕上げることで、質感や重量感、陰影によってずっしりとした印象を与え、行為の重要性を感性に訴える。

「押印という厳粛な儀式を簡便化しプラットフォームを構築したシヤチハタの、原点回帰のような提案である点が興味深い」(深澤)
「物理的な切り口で印鑑が持つ心理的な重みを再確認させる作品」(喜多)
「プロトタイプも上手くできていた。押しやすく、精度が高い」(後藤)
喜多賞
坂本 俊太
Shunta Sakamoto
吉岡 俊介
Shunsuke Yoshioka
安達 岳
Gaku Adachi
チーム名:ノボリトクダリ

カード状の印鑑の提案。スポンジシートの印面を持つカードは、側面に力を与えると立体 化し、従来の印鑑と同じように使える。電子化に伴い様々なものがカタチから解放されるなか、印鑑にも現代生活に沿った「身軽さ」 を与えることで「持っておきたいモノ」へ。

「従来の判子の機能は維持しつつ、平面がパッと立体に変わる新規性。判子といえば立体という既成概念を取り払い、新しいスタンダードに成り得る可能性を秘めた、時代性を感じる作品」(喜多)
後藤賞
広川 楽馬
Rakuma Hirokawa
迫 健太郎
Kentaro Sako
中塩屋 祥平
Shohei Nakashioya
チーム名:JDS

オリジナルバーコードを使ってテープを作成するサービス。バーコードには20字程の英文字を情報として記録できる。バーコードを伸ばしてテープにすることで、メッセージを入れて荷物の梱包に使ったり、名前や連絡先を記録してネームタグ代わりに使うことも可能。

「テープの提案は意匠に寄ったものが多い中で、秘密めいたメッセージ性を持たせているところが新鮮。バーコード自体のデザインも美しく、汎用性が伝わるプレゼンテーションの仕方も良かった」(後藤)
中村賞
小髙 浩平
Kohei Odaka

カーボンやトレーシングペーパー、PETを用 いた、筆跡を刻印する下敷き。学習した分だけ、赤く染まっていく。その赤は、学んだ時間の可視化であり、「日々の研鑽」を表すしるしだ。

「自分の膨大な作業のログというしるしの解釈がユニーク。ノートの裏写りなど、誰しも子供の頃に経験したことがある記憶のいいところだけをパッキングしたポエティックな作品。使用体験としても楽しく興味深いものになっていると思う」(中村)
原賞
石川 和也
Kazuya Ishikawa

従来の鉛筆は2H、2Bなど文字で濃さが示されているため、鉛筆を使い始める小学生が選ぶにはわかりにくい。また鉛筆は試し書きができないため、芯の濃さを確認する術がない。そこで芯の濃さをグリップに筆跡でしるし、直感的に芯の濃度がわかる鉛筆を考案した。

「線の太さと濃度と、タイポグラフィ。これらの要素が一本の鉛筆の中で美しくデザインされている。いかにも審査員が賞を出しそうな作品だが、そのいかにものところをきちんと攻めてきたので、それに応える意味で術中にはまることにした」(原)
深澤賞
矢島 章亜
Fumitsugu Yajima

印鑑を「真っ直ぐ、正確に押す」ことを追求した提案。印影側面の傾斜部に設けたLEDにより、放たれた光が紙面に十字の基準線を描く。その光を目安にすることで、印影の傾きや位置を押す瞬間まで確認することができ、正確な位置への押印が可能になる。

「少し距離がある時はぼわっとしていた光が、近づき的を絞っていくと、どんどんはっきりしていく。その光の動きが、この小さいモデルでよく表現できていると感心した。光と手の動きが連動しているため、押す行為も気持ちよいと感じた」(深澤)
特別審査員賞
若田 勇輔
Yusuke Wakata
内山 智義
Tomoaki Uchiyama
村山 周平
Shuhei Murayama
チーム名:STY

オンラインストアで秘密の質問に答えると、判子になって届くサービス。秘密の質問が書かれた判子を押すと、その問に対する答えが印字される。自分しか知らない自分のこと、すなわち秘密を表すことにより、「自己に対する自己の証明」を可能にする。

「パスワードの確認に使われるような質問と答えではなく、自分が尊敬する人や忘れられない思い出にまつわることを判子にし、大切な思いを詩的に物質として残せるところが良い。大切な人へのギフトにもなりそう」(岩渕)
特別審査員賞
渥美 航
Wataru Atsumi
佐野 千畝
Chiune Sano
吉成 真里
Mari Yoshinari
チーム名:bench

今は作った料理の写真をSNSで発信する人も多い。そこで料理の作り手を伝える、皿の縁に押す判子を提案。軟質シリコン層の印面は、食器の曲面にもきれいに押すことができ、料理に添えられた印は作品としての完成の証にもなる。インクは食用色素を使用。

「時流に合ったアイデアで、シヤチハタらしい判子の新たな展開が期待できる。食用色素インクの代わりに食品を用い、料理を付けて食べられるような使い方も想定したい。印影デザインが鍵になるか」(舟橋)