――大西麻貴さんについて、ご自身や彼女の作品の印象を教えていただいてもよろしいでしょうか。
大西さんは、インクルーシブな感覚のある建築を作られている方だと思います。世代的には「私たち」を主語に据えている感じがしますよね。これまでの建築家はものすごく「私」が主語だったと思うんです。「私」はこういう考え方で、「私」はこういう建築を作る、というような非常に際立った「私性」の強さを持っていた。しかし主語を「私たち」にしていかないと、いろいろなものが包含できないし、社会全体の問題も解決できない。今直面しているのは「私の問題」ではなくて「私たちの問題」ですよね。海洋汚染も戦争も、社会全体の思想を「We」という主語に変えていかないと難しい。若い世代はこの辺りが敏感で、主語を私たちに変えていっている。そんな世代を代表する建築家の肌触りを感じます。