制約があるから自由につくれる
このコンペは「しるし」という、すごくミニマムで簡潔なテーマが設定されていますが、個人的には制約があるからこそ、その枠組を広げながら自由に作れそうだなと思います。第14回のテーマが「『 』を表すしるし」と「表す」だったのに対し、今回は「感じる」になっています。感じるというのはとても不確かで、おぼろげです。私はこういう抽象的なテーマ設定がすごく好きですし、今までとは違う質のものが出てきそうな予感がします。表すだと、的確に物事を伝えなければならない印象がありますが、感じるだと幅が広くて、断定しなくてもよいから、不思議な立ち上がりのものができそうだなと思いました。いろいろ考えやすそうです。
これまで少し不思議だったのが、募集要項には印鑑やハンコじゃないといけないとは書いてないのに、手に収まるサイズの、なにかに押せるものがメインでした。「しるし」という単語からはサインや矢印も浮かびますし、チェックマークのようなものもあるでしょう。それ以外にも自分の身体が入っちゃうくらいのサイズだとか、自然物だとか、一回しか使えないとか、二度と同じものがつくれないとか、そういうしるしもあるよなぁって思ったんですけれど、あまり見たことないなと。少しおとなしめかなと。それはもしかしたら、これまでは商品化を前提としていたからかもしれません。商品にしてもらう幸せもありますが、そこには収まらないような面白くて価値のあるしるしって多分いっぱいあります。今回は評価基準が商品化ではなく「企画の実現性」に変わったので、大量生産に縛られる必要もないですよね。
私の周りの面白いデザイナーたちは、一点物で販売するような方も増えていて、プロダクトデザインだからといって何千個も作るわけではなくなってきています。デザインでもそういう道があることがすでに証明されて、確立されてきています。だから今回、少し変わったらいいなと思っています。