第11回のテーマは「しるしの価値」。応募総数718点の中から選ばれた、11点の受賞作品をここに紹介します。
清水 邦重
Kunishige Shimizu

QRコードを読み取ることで自己PRができる印鑑。自分のホームページやSNSのサイトなど好きな内容を表示できるアプリを開発し、ダウンロードして印影にスマホをかざせばその情報が見られる。初対面の自己紹介にも楽しく使える新たなコミュニケーションの提案。

「デジタルなものと捉えがちなQRコードを、フィジカルな物体として提示した秀作。アイデンティティをスタンプとしてしるすというアクションの中に多くの気づきがあった。現実の中に具現化していく未来のリアリティを見事に掬い取っている」(原)
「デジタルだが判子の印面に似ているQRコードの特徴に着眼した力作。デジタルとアナログがうまく融合している」(深澤)
「ホルダーのデザインは検討の余地があるものの、上下がわかり均一の印圧で押せるよう考えられており、アイキャッチになる形という点では面白い」(喜多)
明間 大樹
Daiki Akema

一人ひとり異なる握り方の違いを印鑑に刻み込む仕組みの提案。3Dスキャナーと加工機器を組み合わせ、材質も樹脂や木材、金属などから選択し、自分だけの印鑑をつくることができる。完成した印鑑の凹凸は、自分だけにフィットする「しるし」になる。

「大事な印鑑を、自分の持ち方のクセをかたどり、自分だけの特別なものに仕上げていくところに魅力を感じた。デジタル・ファブリケーションを活かした、今の時代らしいアイデア」(中村)
「実際にあったら欲しいと思った作品のひとつ。自分だけのものとして、プロダクトに大切な愛着を持って使えるところがよい」(喜多)
青柳 祥生
Yoshiki Aoyagi

文字を「空で書く」電子サインデバイス。空間上に書かれたサイン軌道の座標やストロークの速度を読み取る機能を搭載。平面の動きに奥行きが加わる分複雑な軌道になり、さらに指紋認証機能も付加することで、偽装や模倣のリスクが減りサインの真正性が高まる。

「空中で文字を書き、三次元のものとして記録に残すという着想がユニーク。特にひらがなのように曲線でできた文字が、形として新しいシグネチャーになるのは面白いと思う」(原)
「発想がおもしろい。随分変わった形だなと思ったが、持ってみるとしっくりきた」(中村)
喜多賞
堀川 卓哉
Takuya Horikawa

外国人には名前を表す簡易印鑑や認印がなく、日本での生活で不自由を強いられていることに着想を得た。イニシャルであれば外国人でも印鑑で表すことができる。アルファベット26字×26字=676種類であらゆる名前に対応。

「西洋でも印鑑文化が普及する可能性を秘めた提案。676種類すべてを試作したことも説得力につながった」(喜多)
後藤賞
佐々木 晴美
Harumi Sasaki
坂口 杏奈
Anna Sakaguchi

星のような形状の6つの飛び出した部分に、それぞれ違うデザインの名前が刻まれた判子。同じ名前でも、TPOや気分に合わせて好きな印象のものを選んで押すことで、「こうありたい」と思う自分を、印すことができる。

「楽しく使えて、しかも機能的。フォルムも美しい。プレーン、シンプル、ユースフルの三拍子揃った作品」(後藤)
中村賞
山口 真五
Shingo Yamaguchi

押印した人物を特定できるカメラ付きの印鑑。押印の瞬間を360°カメラで撮影することで、間違いなく本人の意思で押されたことを証明できる。押印した人物・書類・場所(GPS情報)・状況・日時などを画像データとして記録し、クラウド上に保存することも可能。

「ドライブレコーダーのように証拠保全できる実用性を高く評価した。もっと判子然としているとさらによい」(中村)
原賞
服部 隼弥
Shunya Hattori
那須 裕樹
Hiroki Nasu
(design studio Bouillon)

三文判にかぶせて押すだけで楽しめる遊び印。「名は体を表す」のことわざさながらに、名前の印面を顔に見立て、にじみ出る個性を髪型のアイコンで視覚化した。ありのままの自分を表現するもよし、冒険するもよし、印鑑を押すシーンを楽しく演出するコミュニケーションツール。

「アイデンティティとはいえない三文判にいたずらを加えて個性化するという、パーソナライズの仕方が秀逸」(原)
深澤賞
望月 未来
Miki Mochizuki

ネーム印やスタンプ台での使用を想定した、口紅の色がモチーフのインキシリーズ。色によって多様な雰囲気を演出できる口紅の特性に着眼した。自分らしい色、好きな色で捺された印には、その人のアイデンティティがより強く現れる。

「口紅の色は女性にとってのアイデンティティという、日々に漂う色気に気づきを与える作品」(深澤)
特別審査員賞
榊原 伸一
Shinichi Sakakibara

マンガの1コマをモチーフにしたドラマチックなスタンプ。空いている部分に印鑑をはめ込み一緒に捺印すると、あたかもマンガの主人公のように、名前が意思や感情を持った生き物へと変化。そこに生命が吹き込まれ、自分の「しるし」になる。

「名前にメッセージがつくだけで楽しいしるしになり、コミュニケーションの手段として遊び心がある」(岩渕)
特別審査員賞
竹中 隆雄
Takao Takenaka

篆刻の浸透印付き筆ペン。筆文字に篆刻印を押すと文字が美しく見え、書き手の「しるし」を添えることにより気持ちも伝わりやすい。筆ペンが日本土産として外国人に人気があることから、グローバル市場やインバウンド市場での需要も期待できる。

「当たり前すぎて思いつかなかった、盲点を突いた作品。筆ペンと篆刻印の組み合わせが素晴らしい」(舟橋)
特別審査員賞
米田 隆浩
Takahiro Yoneda

捺印した跡(印影)に影をつけた印字の判子。文字を縁取る影は、そこに光が当たっている証。一人ひとりにスポットライトを当てるように、固有の「しるし」がアイデンティティを際立たせ、従来の印字にはない存在感をもたらす。

「印影のある判子はありそうでなかった。立体感のある印字も美しく、あれば欲しいと思う現実的な提案」(後藤)